泣き虫パンダと慰め役のセバスチャン

不器用な新人社会人が世の中を生き抜くための処世術

スマイルパンデミック

私がまだ誰かに恋していた頃、よく仲良くしてた人にこんなことを言われました。

 


「そんなに必死こいて痩せなくても、女の子が笑ってる姿見せとけば男はイチコロだから。ニコニコしとけばいいんだよ。」

 


その時はとんだ偏見だと思っていましたが、それを言った本人はいつもニコニコ笑っていて、その笑顔のおかげか狙った男の人と必ず恋仲になれていました。

 


笑顔の威力ってすごいなと、月並みな感想を抱き、と同時に、ニコニコしておけば好きな人の隣にいれるなら、どんなにシワが刻まれようとも笑顔でいようと心に決めました。

 


今日はそんな笑顔についてのお話です。

 

*


パンダは思った。

「モテたい。」

「それは不特定多数の男性に好かれたいってこと?」

なんかその言い方はなんか卑しいからやめてという抗議の目をセバスチャンに向けるパンダ。

「モテるってそういうことでしょ。」

「まあ、そう言ってしまえばそうなんだけどさ。なんかこう、どんな人からも可愛らしいなと思ってもらえる女性になりたいというか。愛され女子みたいな。」

「ふーん、少し前まで個性を大事に大事にしていたあなたがねー。すごい心境の変化だこと。」

さては気になる男の1人や2人出来たなとお見通しのセバスチャンであったが、そこまでいうとすでに唇を尖らせているパンダに今度こそ拗ねて口を聞いてもらえなくなりそうなので黙っておいた。

「たまにはキャラ変も悪くないでしょ。」

「どうぞお気に召すままに。」

パンダはそれからモテメイク、モテファッションなどのモテが入ったキーワードでYouTube検索をかけ、出てきた動画を上から見ていった。

数分後、世の中の女性がいかにしてモテを追求してるかを痛感したパンダは、半分魂が抜けた状態でこう言った。

「分かってはいたけど、モテってこんなに必死こいて個性を消して可愛さを追求しないといけないの…。」

「誰の動画見たのよ。」

いや、今まで個性第一主義で生きてきたパンダだ。誰の動画を見たってモテようとした瞬間、今のパンダはその個性を押し殺さなきゃいけないのは目に見えていた。

「モテへの道はこうも茨の道なのね…。」

「そんな茨の道を進むよりも簡単に、それでいて確実にモテる方法があるとしたら、どう?」

せっかく志したモテ女子への道を、半ば諦めそうになってるパンダに、セバスチャンのその一言は希望の兆し以外の何者でもなかった。

「え、何したらいいの?」

「簡単よ。ニコニコ笑ってればいいのよ。スマイル。」

そう言ってニコッと笑ってみせるセバスチャン。

「おちょくってるの?笑ってるだけでモテるなんてどこの美少女の話。」

「美少女だったら真顔でもモテるわね。」

むすっとした表情を返すことしかできない自分が悔しいパンダ。

「あのね、顔のクオリティ関係なくいつもニコニコ笑ってる女性っていうのは周囲の人を幸せにするのよ。笑顔って伝染するんだから。あなたも目の前に元気で明るい笑顔の小さな女の子がいたらつられて笑顔になるでしょ。」

子供が好きなパンダはニコニコしながら子供の相手をする自分が容易に想像できた。

「それに笑顔でいることは顔面の筋肉をフル活用してるから、顔の浮腫み解消に繋がったり、意外と肌にもいい影響を与えるそうよ。」

「え、本当?」

咄嗟に自分の頬を両手であげるパンダ。

「本当かどうかは自分で試してみることね。とにかくいつも笑顔で、ニコニコして、幸せオーラ出しておけば向こうから話しかけてくれるわよ。」

「だといいけど。」

 

*

 


笑顔でいる時というのは、何か楽しかったり、面白かったり、嬉しかったり、どのパターンでもポジティブで幸せな時です。

 


そんな笑顔にしてくれる人の存在に人は好意を持つようです。

 


その笑顔、最初は作り笑いでも効果はあります。

 


きっと認知性不協和というやつのせいでしょう。

 


冒頭でも言ったように私は過去に笑顔の威力を目の当たりにしたことがありますが、その理由を改めて知ると、どんなに可愛いメイクをするよりも笑顔でいることに全力を注いだ方が、恋のキューピットは矢を放ってくれることは確かなようです。

 


そう考えると、笑顔はとんでもない伝染力と威力を持った最高のメイクです。

 


あともう少しだけ口角を上げれば、もうすぐ恋が叶うかも。