泣き虫パンダと慰め役のセバスチャン

不器用な新人社会人が世の中を生き抜くための処世術

真面目な顔して耳ちくわ

ちくわというものは、竹の輪とかいて[ちくわ]と読みます。

なぜ竹の輪なのかというと、ちくわの作り方に答えはあります。

ちくわは、棒に魚のすり身をつけて焼いて、焼き上がったら最後その棒を抜いて出来上がり。だから、竹輪。

なんとも単純な理由から名前がつけられたわけですが、この作り方によってできたちくわの穴。

今回はそんなちくわの穴に関するお話です。

 

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先日のセバスチャンからのアドバイスを受け、パンダは仕事中極力鬼瓦先輩とは顔を合わせないようにしていた。

とは言え、一緒の職場の一緒の部署にいる人物と全く顔を合わせない、なんてことは出来ないので、予想だにしてないタイミングで捕まる。

『普通こんなやり方しないでしょ。何を勉強してきたの?』

『先輩に言われたことをそのまましてれば良いのに。』

とまあ、いつもの嫌味がはじまる。

言われてることがグサグサ響いて来るパンダは今すぐ帰りたい衝動に駆られた。

 


その日やっとの思いで帰ってきたパンダは、帰って来るなりソファに倒れ込んだ。

「んーーーーーー疲れたーーーーーーーー。」

その倒れ込んだ状態でセバスチャンに今日のことの顛末を話した。

「私もね、努力はしてみたの。けど捕まったら話聞かなきゃいけないし。それで話聞き始めたら、もう…人って嫌味な言い方出来るの?って感じで、毎回嫌味の過去最高得点を更新してくるの。本当嫌でもイライラする。」

「あなた変に真面目だからそういうふざけたことにもちゃんとはいはいって聞いちゃうのよね。」

「だって変な態度取ったら余計怒られるじゃん。」

青ざめた表情で、ここにいない敵にビビるパンダ。

「もう、聞いてるふりだけしてたら?」

「聞いてるふり?怪訝な表情で聞き返してくるパンダに、セバスチャンはさも当然と言わんばかりの表情で答える。

「そうよ。聞いてるふりだけして別のこと考えてれば良いわ。あ、この人の話聞く必要ないなって思ったら耳をちくわにして聞くのよ。」

「ちくわって…ふざけすぎじゃない?」

「ふざけたことしてくる人に、ふざけ返して何が悪いのよ。」

セバスチャンのニッコリとした笑顔の奥に恐怖を感じたパンダは、ハハッとひきつった笑いで返すのだった。

 

*


大事な人材を自分のストレス発散のサンドバックにしてくるふざけた人物に真面目に接する必要はどこにもありません。

真面目な顔で聞いてるふりだけして、耳をちくわにして聞くぐらいがちょうど良いのです。

 


目には目を。

心の中で舌を出して敬意を持ってあっかんべーを相手に捧げましょう。