泣き虫パンダと慰め役のセバスチャン

不器用な新人社会人が世の中を生き抜くための処世術

空っぽの頭

 


机の引き出しには何を入れていますか。

メモ帳や、文房具を入れていたり、大事な書類を入れていたり、もしかしたら化粧道具が詰まっているかもしれません。

 


私がこの間見たドラマでは、机の引き出しにド派手なブラジャーとショーツがぎっしりと入っていました。

【来世ではちゃんとします】というドラマです。

 


では、逆に何も入れてないという人はいますか。

引き出しを持て余してる。

未来と過去をつなぐ時空が広がってるから何も入れられない。

そんな人も少なく無いと思います。むしろこっちの方が多いのかも。

 


引き出しには何を入れようが、そして入れなかろうが自由ですが、頭の引き出しはどうでしょう。

 


今日はそんな引き出しについてのお話です。

 

*


「駄目だ。何も浮かばない。」

ただいまパンダは小説執筆中。しかし、困ったことに書きたいことは頭の中にあるのに、その言葉をなかなかうまく頭の外に取り出せないでいた。

書く場所を変えてみたり、以前書いた自分の文章を参考に見てみたりしたがこれが面白いことに全く思い浮かばない。

あーっと情けなく伸びながら、床に仰向けになってやめだやめだ!と不貞腐れるパンダにセバスチャンが覗き込むように声をかける。

「今日はギブアップ?」

「今の私には言葉を紡げなくなった。」

一丁前にスランプに陥った売れっ子作家みたいなことをいうパンダに、セバスチャンはやれやれと首を横に小さく振る。

「何をしても、どこに行っても思い浮かばない時は頭の引き出しを全部開けちゃった時なのよね。ようは頭の中が空っぽになってるの。だからいくら頭を使っても無駄よ。」

「えーそんなー。身も蓋もないこと言わないでよ。」

「本当のことだからしょうがないでしょ?それに引き出しを開けこってしまったそんな時こそインプットしやすい時期。こう言う時に小説や、映画を見ると新鮮な気持ちで表現の仕方を学べるから、いつもより多くのことを吸収できるかもしれないわよ?」

今まで頭の中のイメージをどう取り出すかについて、つまりアウトプットのことしか考えてなかったパンダにとって、インプットをしろと言うのはあまりにも単純でありながら、単純でありすぎるが故に灯台下暗しだったようで、確かにそうだなと思う気持ちと、なんでそこに気づかなかったんだという思いが一気に頭の中に流れ込んだ。

すっと立ち上がり自分の部屋に向かうパンダ。

「やっぱりこういう時は芥川賞作家に頼るのが1番だと思うんだよね。」

そういって随分前に買って読まずに本棚のインテリアと化していた又吉直樹氏箸の【劇場】を手に取った。

読んでみると最初の一文からしてさすが芥川賞作家と言わんばかりの言い回し。

「…カッコいい。」

そこから1時間作品の世界に没入するパンダであった。

 

*


井の中の蛙 大海を知らず、という言葉があるように、それまでの自分の中の世界だけで考えてしまうとどうしても狭い範囲でしか物事を考えることしかできません。

 


狭い範囲で考えたことは、狭い世界でしか通用しません。

 


そんな身内ノリで楽しいだけで満足ならそれでもいいのでしょうが、私はわがままなのでそれではちょっと物足りません。

 


もっと広い世界で通用するには、それだけ思考の範囲を広げる必要があり、思考の範囲を広げるには他の人のその範囲を取り込むことが1番手っ取り早いです。

 


煮詰まったら外の世界に目を向けてみてください。

そこには、全く知らない未知の世界が一面に広がっていまから。