泣き虫パンダと慰め役のセバスチャン

不器用な新人社会人が世の中を生き抜くための処世術

知らないのトレジャーハンター

 

私は高校の時の記憶といえば、担任を始め各方面の先生に舐め腐った態度を取って、死ぬ程キレられるという思春期真っ盛りの記憶が強く残っています。

 


もっとあの時素直に人の言うことを聞くと言うことを身につけておけばよかったと後悔しないこともないですが、10代の心とはそういうものなのでしょう。

 


しかし、そんな私にも尊敬している先生はいました。

 


今日はそんな高校時代の先生についてのお話です。

 

*


パンダはふと高校時代のことを思い出した。

思い出していたのはパンダが高校の時、国語の担当をしてくれた熱血おじいちゃん先生のことだ。

仮にその方をK先生と呼ぶことにしよう。

「その先生の授業はとにかく面白くてね。それで授業で使う資料とかも全部手書き。とにかく国語という教科に対して熱くぶつかって、文学がいかにすごい世界か教えてくれたの。もともと本が好きだったってのもあるけど、どんなに眠たくてもその先生の授業だけはちゃんと聞いてたなあ。」

当時学校を舐め腐ってたパンダにとって授業というものは寝る時間と同意義だった。そんなパンダが、寝ずに授業を聞くというのは、相当そのK先生の授業が好きだったということだ。

「そのK先生はとくに江戸川乱歩が好きでね。私も興味があったからよく質問しにいってたんだけど、乱歩のどの作品のことを聞いてもめちゃくちゃ詳しい解説が返ってくるの。もう1聞いたら100返ってくるみたいな。でも一つだけ知らない作品があってね。『押し絵と旅する男』って作品について聞いたら、その作品は知らないって。」

「へえ、そんなに詳しいのに知らない作品があったのはちょっと驚きね。」

「そうなの。でももっと驚きだったのは、知らないことを素直に知らないって言われたことだったの。」

先生という立場で、好きな作家のことを聞いてるのだ。そして聞いているのは一生徒であるパンダだ。多少知ったかぶりしても良い場面でそのK先生は「知らない」ときっぱり答えたのである。

「でも、その先生の目はキラキラ輝いてて、次の日にはその作品について調べたことを私に教えてくれた。その時、この人すごいなあって素直に思ったんだよね。」

「きっとその先生は、自分の好きなことの知らない部分が出てきて素直に嬉しかったのよ。毎回楽しみにしてる漫画の新作が出たかの如く、調べ尽くしたと思える事柄に、じつは知らない部分があったって知った時のワクワクが強かったから、素直に知らないって言えたんだと思うわ。」

「そうなのかなー。」

「きっとそうよ。人は本来自分の知らないことに対面して、それを調べて、新たな知識を得ることに強い喜びを得ることができる生き物よ。でもいつしか、プライドとか立場とか、場の空気とかに支配されて知らないことが恥ずかしいことだと思えてきちゃうのよね。知らないことってのは本来喜びに繋がる宝物なのにね。」

 

*

 

自分の知らないことについて話題が出た時、時に見栄を張って知ってるフリ、所謂知ったかぶりをしてしまう。

いつの間にか人は、知らないことは恥ずかしいと思うようになってしまうようです。

 


それは錯覚です。

恥ずかしいことなんて全くないのです。

知らないことに対面すると言うことは、自分に新たな知識を与えてくれる宝箱を見つけたということなのですから。

 


知らないことを恥じず、また一つ知識を増やせるワクワクと喜びを噛み締めれば、人生はきっともっと面白くなります。