泣き虫パンダと慰め役のセバスチャン

不器用な新人社会人が世の中を生き抜くための処世術

指示待ち族

皆さん普段料理はしていますか?

 


私は実家暮らしですが、料理をするのは好きなのでよく自分で作って食べています。

自分で言うのもなんですが、意外と好評で、調理科出身のシーちゃんも、飲食店を営む両親からも「美味しい。」とのコメントをいただいております。

そりゃそうです。

レシピ通りの分量で作ってるんですから。

 


今の時代、レシピ本を買わなくてもグーグル先生やYouTubeで検索すれば美味しい料理の仕方がごまんと出てきます。

それ通り作っていれば、失敗なんてまずありません。

 


とある記事で見たのですが、料理が下手、苦手という人はレシピの分量を守らなかったり、レシピにない食材や調味料を勝手に足してしまったり、作り方の手順がグチャグチャであることが大きな原因にあるようです。

 


今日はそんな料理に関するお話です。

 

*


パンダがキッチンの前で呆然と立っている。

「まっず…。」

魚の煮付けを作っていたパンダ。

ちょっと味見、と思って煮付け汁をスプーンで掬って一口飲んでみると、これがなんとも言えない不味さであった。

「うわ、酷い味。なに入れたらこうなるの?」

隣でセバスチャンも顔を顰めている。

「水と酒と醤油とみりんと砂糖。」

「その材料でどうしてここまで不味くなるのよ。」

その煮付け汁の味というのが、なんといえない酸っぱさそしてなぜかフルーティさがあり、それが他の調味料と殴り合いの喧嘩をしていた。

「明らかに失敗だ。」

落ち込むパンダを見てセバスチャンは首を傾げる。

おかしい。料理は得意なはずなのに。

珍しく失敗した理由はなんだとキッチンを見回すとその答えはすぐ見つかった。

「ねぇ、酒ってもしかしてそれじゃないわよね?」

セバスチャンが指さした先には、白のスパークリングワインが堂々たる存在感で立っていた。

「…あ、バレた?」

パンダを自分の失敗の理由を認識してたらしい。

「和食に洋酒を使うお馬鹿さんをみたのは初めてよ。」

「だってずっと冷蔵庫にあって邪魔なんだもーん。それに今日は赤魚は煮付けでしか食べる方法知らないし…。」

そんな言い訳をするパンダにセバスチャンはもうため息を深くつくことしかできなかった。

「これ作る前にYouTubeでも作り方確認してたのに、言われたとおりにやらずに勝手にやるから大失敗するんでしょ?」

その言葉にパンダは「あ、それ仕事でも言われた。」と、いきなり言い出した。

「今の職場じゃないんだけど、前の職場で言われたの。『言われたことだけやってればいいのに。』って。それ言われた時は、すごい嫌味な言い方で腹立つなーと思ってたんだけど、確かに言われたとおりにやるのが1番だわ…。」

パンダは、ハハハと情けなく笑いながら今回のことと、過去の失敗を反省をしているらしかった。

「何にもわかってないくせに、変に正義感振りかざして、謎の自信を持って生意気言ってたらそりゃ煙たがられるわ。うん、今納得した。」

「そうよ。何も分かってない人が言われたことをしなかったら、それはただの身勝手よね。」

まずは言われたことを確実に出来るようになって、その行動の根拠が分かるようになってから臨機応変に動く。これ社会と料理の基本とセバスチャンは強めの口調で言った。

「よし。いただきます。」

パンダはそのまま手を合わせ、自分の失敗の責任を取ると言わんばかりに、その負の産物を平らげたのだった。

 

*


私は特に新人の頃、指示通りに動けば指示待ち属と言われて、次何したらいいですかと聞きにいけば自分で考えてと煙たがられ、自分で考えて動いたら勝手な判断をするなと怒られるという感じで八方塞がりによくなります。

 


ほんとにあった怖い話です。

 


全部で文句言われるならどうしたらいいんだよ!

ホワイ!ジャパニーズピーポー!!

そんな感じで叫びたくもなりました。

 


しかし、思うのです。

自分が指導する立場になった時、言ったことをせずに失敗されたら?

指示したことをやらずに、余計なことをやって仕事が増えたら?

 


想像しただけでイライラするでしょうし、きっと愚痴ノートが真っ黒に染まると思います。

 


ということは、言われたことだけまずやる。

これが新人の時の鉄則です。

 


言われたことをやって他に手を出さなければ、間違えることはありません。

自分の身を守るためにも、第三者に迷惑をかけないためにも、まずは言われたことだけやってればいいのです。

 


指示待ち族で何が悪い。