泣き虫パンダと慰め役のセバスチャン

不器用な新人社会人が世の中を生き抜くための処世術

たまには遠回りでも

仕事に行くときの通勤方法っていろいろありますよね。

 

自分で運転して車通勤したり、公共の交通機関を使って定期通勤したり、家が近い人は自転車や徒歩通勤もできます。

 

アメリカの方に行くと、土地が広すぎるせいか水上バイクで通勤する人もいるみたいです。

朝からビッショビショになっていい目覚ましなのかもしれません。

 

今日はそんな通勤についての話です。

 

*

 

その日パンダは修理したばかりの自転車のペダルを、力一杯踏み込んでいた。

「徒歩だと15分かかるけど、自転車だと5分で着くからね。」

冬の自転車通勤はなんといっても手が悴むし、マスクをしてるから息も苦しいが、朝の睡眠時間が10分伸びるなら、この地獄も耐えられるとパンダは言う。

「事故しないように気をつけてね。ここら辺交通量意外と多いし、急に坂道になるんだから。」

いつにも増してセバスチャンが心配性なのは、パンダが今まで2回ほど、自転車に乗った状態で車に轢かれたことがあるからだった。

「お母さんみたいなこと言われなくても大丈夫。左右の確認はちゃんとするから。」

流石に車に轢かれた衝撃と、そのときの骨折の痛みを嫌というほど経験したパンダの自転車走行は安全そのものだった。

そして順調に職場までたどり着いたパンダはそのまま自転車を…

「職場通り過ぎたわね。」

「職場の自転車置き場どこか知らないんだよね。面倒だから近くの自転車置き場まで行ってくる。」

そんなわざわざ少し離れた自転車置き場に行かなくても、一言職場の人に聞けばいいものを…どんだけめんどくさがりなのよもう!と呆れ顔のセバスチャン。

パンダは言った通り、職場からほんの少し離れた自転車置き場に自転車を止め、職場の方向へ歩み始めた。

するとパンダの視線があるところで止まる。

「待って。イケメン発見。」

なんとパンダの目線の先には、職場の目の保養枠であり、パンダの密かな推しであるイケメン上司の姿が。

「うそ…飛んだラッキーパンチね。」

あっちもパンダの姿に気づいた様子で、話しかけて来てくれた。

そのまま職場まで一緒に上司と向かったパンダのテンションは急上昇し始め、この間までヒーヒー言ってた仕事を、なんなくやってのけた。

そんな日の仕事帰り「遠回りも悪くないね。」なんてウキウキした口調で、パンダは自転車のペダルを漕ぐ。

「そんな調子のいいこと言って。まぁでも、どんなことが仕事のモチベになるか分からないし、たまにはいいかもね。たーまーにーはー。」

セバスチャンの後半の言葉は、パンダの鼻歌によってかき消されたいた。

 

*

 

遠回り遠回り言ってますが、そんな10分もタイムロスするような遠回りではないですよ。

 

ほんの1.2分の話です。

 

でも、今の世の中少しでも無駄は省いていくような風潮あるじゃないですか?

 

確かに無駄は省いていったほうがいいと思いますが、そこまで神経質になるほど無駄無駄と言ってしまえば、それはなんだか味気ない噛み終わったガムのような人生だなと私は思います。

 

人生は短いですが、そんな僅かな無駄も許されないほどの短くはありません。

 

心の安寧のために、少し遠回りしてみませんか?

少し先に、美味しい未来が待ってますよ。