泣き虫パンダと慰め役のセバスチャン

不器用な新人社会人が世の中を生き抜くための処世術

ハイブランド着飾り人形

私は普段周りが田んぼで囲まれている田舎に住んでいますが、ごくたまに都会に出て用事を済ませることがあります。

すると、明らかに私よりも若い子、特に高校生の子が有名ブランドのバッグや財布を持っていることを目にします。

 


その度、都会は進んでるなーと思います。

たとえそれが、よくできた偽物であっても、型落ちしたアウトレット商品、もしくは親のお下がりであっても、有名ブランドを身につけているんだぞという姿はすごく自信満々で堂々としています。

 


それが、新作の定価で買った本物の商品であれば、よりその堂々さに磨きがかかります。

 


今日は前に投稿した「髪を切って過去を断ち切る」の話の続きをしながら、そんなブランド品を身につけることについてのお話です。

 

*

 


その日出来るだけのお洒落をして都会に出てきたパンダは、胸につきそうなくらい長く伸びた髪の毛をバッサリ切るために、行きつけの美容室に向かっていていた。

時間通りに美容室についたパンダは見事過去との決別に成功。

惰性で伸びた髪の毛を容赦なく切り離した綺麗なボブ姿で出てきた。

「あースッキリー♪」

「やっぱりショートのほうが似合うわね。」

セバスチャンの言葉に、得意げにまあねと返すパンダ。

もともとショートヘアでいた年数の方が多いパンダは、お馴染みの自分の姿に戻ったことに大満足していた。

「あ、久々にデパコスでも見に行こうかな。コンシーラー欲しいんだよね。」

そう言ってパンダは、とあるデパートの1階に向かった。

メイクが好きなパンダ、センラさんの影響でMACで赤シャドウを買って以来、デパートでブランドコスメを買うことに、ささやかな快感を覚えたパンダは、定期的にこうやってデパコスを買いに行くことがあった。

デパート内に入ってみると、思った以上に多くの人がいた。

デパコス街だけあってその中でも女の人が圧倒的に多い。

パンダはそんな周りにいる女性たちを無意識に観察してしまう。

「ヴィトンにグッチ、バレンシアガ…あっちはコーチみんなブランド好きだねー。」

「あなたも嫌いじゃないでしょ?」

「もちろん。今使ってるのもそうだからね。と言ってもあんな分かりやすいロゴの知れたブランド品は持ってないけど。良いものは良いからね。」

今現在こうしてデパコスを買いに来ているパンダも全くない訳ではないが、今よりもっと若かった頃のパンダは、超高級思考があったので、バッグや財布ならず、コートなどのアウターやメガネも実は海外製のブランド品で固めてあった。

「ジュエリーも相当買ったよ。おかげで毎月すぐお金が飛んで行くけどね。」

そんな話をしながら、お目当てのコスメブランドのブースの前に着くと、パンダはBAさんに「コンシーラーを見たい」と伝えて、接客の順番を示す整理券を受け取った。

程なくして、接客の順番が来たパンダはブース内のメイクルームに腰掛ける。

と言っても、このご時世。

BAさんからの直接なタッチアップはしてもらえないため、自分で軽く商品の確認をしたあと、気に入った商品を購入し、さっさとデパートを後にした。

「でも、ハイブランドを身につけてれば良いってわけじゃないんだよね。」

「ん?」

と言った後に、デパート内で話していた内容のことかと察するセバスチャン。

「良いものを身につけていれば、自然とテンション上がるし、やっぱり物がいいから形が綺麗だったり、周りから褒められたりするんだけど、だけど、外見だけ良くして中身がチャランポランだったらすぐ見抜かれちゃうのよ。」

そう言ってパンダは、前の前に勤めていた職場の先輩から言われたことを思い出した。

その当時パンダは、看護師として夜勤も入っていたためお金に余裕があり、持ち前の超高級思考があったため、機会がああればインポートの品々を買いまくっていた。

その話を先輩にした時に、“良いものを買うのは良いけど、それに見合うほどの中身のある女性にならなければ、ただの虎の威を借る狐になっちゃうよ”というありがたいお言葉を頂いた。

「おしゃれが好きで、見た目にお金かけるのは悪いことではないけど、それで固めてドヤ顔してる人なんて嫌がられるに決まってるじゃんってさ。その言葉聞いて自分のこと見直したら確かに高いものは良い、安いものはダサいって考えになってたなって思った。」

「それ、人間そのものにも言えるわね。顔がどんなに良くても性格が悪かったら意味がないから、結局見た目と中身が良くないと人として魅力がないってことね。」

性格のいい美人が1番だねなんて言いながら、駅の階段を駆け上がるパンダであった。

 

*


何も、若いくせにハイブランドを身につけることが悪い。

と言うつもりはありません。

そんなこと言ったら、自分で自分に強烈ななボディをぶち込まなくてはなりません。

 


ハイブランドを身につけるだけで、自分もそれぐらい価値のある人間だと勘違いすることがないように生きていかなければならない、と私は言いたいのです。

 


これは過去の自分への戒めでもあるんですが、ハイブランドやインポート、高級ジュエリーを身につける時、ただの着飾り人形になってしまってはダメです。

 


着飾り人形から脱するには、品があり、誰にでも優しく平等に接し、心に余裕がある。

そんな中身が伴う必要があると、私は思っています。

 


ただの着飾り人形でありたくはないのです。